読んだ本の感想・レビューを書いてます。お気に入りの作家は、東野圭吾・よしもとばなな・伊坂幸太郎・道尾秀介などなど他にもたくさんいます♪

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  • 2013.01.17 Thursday
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  • by スポンサードリンク

小川洋子「ことり」静謐で慎み深い一生、優しくて切ない物語

            
評価:
小川 洋子
朝日新聞出版
¥ 1,575
(2012-11-07)
コメント:静謐で慎み深い一生、優しくて切ない物語

世の片隅で小鳥のさえずりにじっと耳を澄ます兄弟の一生。図書館司書との淡い恋、鈴虫を小箱に入れて歩く老人、文鳥の耳飾りの少女との出会い…やさしく切ない、著者の会心作。
「BOOK」データベースより


まさに小川洋子の世界。
規則正しく、静謐で、思いやりに満ち、そして切ない・・・。

小鳥の小父さんの一生を描く。
小父さんとしかコミュニケーションが取れない兄。大好きで、尊敬している兄との、慎ましやかで穏やかな生活。

鳥の声に耳を澄ませ、ラジオに耳を傾け、兄のために規則正しい毎日を送る。恋人もいず、結婚もせず、黙々と管理人の仕事と鳥小屋の掃除をしている小父さんは、果たしていい人生だったのかな?と思ってしまうけど、そもそもそんな考えは余計なお世話だと気付く。

おそらく小父さんは、普通の人たちが得られなかった、とても豊かなものを得ていたし、幸せだったと思いたい。

優しく、そして切ない物語。







JUGEMテーマ:読書



小川洋子「妊娠カレンダー」繊細で美しい文章だからこそ、ひやっとする怖さと残酷さが際立つ上質の短編集

            
評価:
小川 洋子
文藝春秋
¥ 440
(1994-02)
コメント:繊細で美しい文章だからこそ、ひやっとする怖さと残酷さが際立つ上質の短編集

姉が妊娠した……やがて妹はめまいのするような悪意の中へすべりこんで行く。現実のゆらぎをきらめく言葉で定着した芥川賞受賞作
「内容紹介」より


これは、遥か遥か昔に読んだことがあったような・・・?と思いつつ読んだ。一部、微かに思い当たるところもあったけど、きっと気のせい。やっぱり読んでなかったんだと思う。・・・たぶんね。

この「妊娠カレンダー」は1991年に芥川賞を受賞。
今から20年以上も前の作品なのに、色あせることは全くない。脈々と描き続いている小川洋子の独特の世界は健在で、本質の変わらなさに嬉しくもなる。

姉の妊娠を知った日から、妹がひそかに始めた作業・・・。姉、姉の夫、そして妹。一緒に暮らしているはずの3人は、ナゼか微妙にちぐはぐで淡々としていて、お互いをどう思っているのかいまいち分からない。読んでいる間中、ずっと心がざわざわ。

読めば読むほど疑問が湧き出てきて、どうして短編なんだ!と思ってしまう。姉と妹の関係、姉の病気のようなもの、姉と夫とのなれそめ、3人で暮らしている経緯・・・奇妙な雰囲気がずっと漂っているのにも関わらず、答えはどこにも書いていない。何だろう何だろうと思っている間に終わってしまい、ぞーっとしながら途方に暮れてしまう。

そして「ドミトリィ」には、さらにぞーっとして、「夕暮れと給食室と雨のプール」ではまるで時間が止まっているかのように、しんとしている。3つ、どの短編も映像がすぐに頭に浮かび、だからこそ余計にひやっとする怖さがある。そして繊細で美しい文章だからこそ、残酷さが際立つのだろう。

静かに暗くて怖い・・・、決して一筋縄ではいかない感じがものすごく私の好み。上質な物語が読めたなぁと満足です。小川洋子は裏切らないなぁ!







JUGEMテーマ:読書



小川洋子「沈黙博物館」間違いなく生きていた証拠。死者たちの形見が語る物語とは?

            
評価:
小川 洋子
筑摩書房
¥ 714
(2004-06-10)
コメント:間違いなく生きていた証拠。死者たちの形見が語る物語とは?

耳縮小手術専用メス、シロイワバイソンの毛皮、切り取られた乳首…「私が求めたのは、その肉体が間違いなく存在しておったという証拠を、最も生々しく、最も忠実に記憶する品なのだ」―老婆に雇われ村を訪れた若い博物館技師が死者たちの形見を盗み集める。形見たちが語る物語とは?村で頻発する殺人事件の犯人は?記憶の奥深くに語りかける忘れられない物語。
「BOOK」データデータベースより


この「沈黙博物館」も小川洋子独特の世界がたっぷりとつまっている。ぷんぷんと漂う死の匂い、虚構と現実の境界線の曖昧さ、言いようのない不安に駆られていくのに、読むのをやめられない。

膨大な財産を持つ口が悪い老婆、可憐な娘、庭師と家政婦、沈黙の伝道師・・・様々な人たちと関わりながら、博物館技師の主人公は、形見を展示する博物館を作るため奔走する。

小説なのは分かっている。でも小川洋子の小説を読むたびに、きっとこれはどこかで本当にある現実じゃないか、と思ってしまうのだ。

おとぎ話では決してない、毒気のあるファンタジーとでも言うべきか。私にはもう物凄く大好きな作風なのね。きっと万人受けはしないんだろうなぁと思いつつ、暗さと静けさ、生死に向かう荘厳な姿勢にどうしようもなく惹き付けられてしまうのです。







JUGEMテーマ:読書



小川洋子「最果てアーケード」圧倒的な喪失感と孤独。生と死を濃密で美しく繊細に描いた不思議な物語

            
評価:
小川 洋子
講談社
¥ 1,575
(2012-06-20)
コメント:圧倒的な喪失感と孤独。生と死を濃密で美しく繊細に描いた不思議な物語

ここは、世界でいちばん小さなアーケード―。愛するものを失った人々が、想い出を買いにくる。小川洋子が贈る、切なくも美しい記憶のかけらの物語。
「BOOK」データデータベースより


不思議で、大好きな小川洋子の世界。
ファンタジーでありながら毒があり、静謐で美しく、そして切ない。常に死が隣り合わせにあり、そのことがさらに崇高さと透明度を増していく。

この「最果てアーケード」は、著者が初めてマンガの原作として書き下ろしに挑戦した作品らしい。マンガも読んでみたいな。





でしゃばらず誠実に、仕事に誇りをもっているアーケードの店主たち。箱庭のように小さく、一風変わったものを扱うお店。

レース屋、義眼屋、紙屋、ドーナツ屋、ドアノブ屋、勲章屋・・・。一般的な普通の買い物客で賑わうような品揃えとはいえない。けれど、客は来る。死の影を纏わせながら、最後の希望を携えながら、ひっそりやって来る。

生と死をモチーフとした、濃密なのに繊細な不思議な物語。語り手も時間軸も微妙に分からなくなり、途中で「あれ?もしかして私、大きな勘違いをしているのかも」と、物語に引き込まれながらも、ふと不安になり何度か読み直したりした。

ひしひしと伝わってくる圧倒的な喪失感と孤独。悲しくて切ないのに美しい。小川洋子ならではの独特で素晴らしい物語、お勧めです。








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小川洋子「人質の朗読会」ささやかな日常の大切さに気づく、心の奥底にじんとくる美しい物語

            
評価:
小川 洋子
中央公論新社
¥ 1,470
(2011-02)
コメント:ささやかな日常の大切さに気づく、心の奥底にじんとくる美しい物語

遠く隔絶された場所から、彼らの声は届いた。紙をめくる音、咳払い、慎み深い拍手で朗読会が始まる。祈りにも似たその行為に耳を澄ませるのは人質たちと見張り役の犯人、そして…しみじみと深く胸を打つ、小川洋子ならではの小説世界。
「BOOK」データデータベースより


遠い異国で、テロリストにより拉致されてしまう日本人観光客8名。年齢も性別も職業も異なる彼らは、人質となり拉致されている中で、ひっそりと朗読会を始める。

自分たちがいつ助かるか、と先の見えない未来を想像して心配するより、未来がどうあろうと決して損なわれない過去を思い出そう。そして1人ずつ語り、みんなで聞こうと始まった朗読会。

残念ながら、人質8人は救出されることなく全員死んでしまう。そして2年後、特殊部隊が犯人グループの動向を探るために仕掛けた盗聴テープが公開され、朗読会はラジオで放送される・・・。


小川洋子は好きな作家の1人で、初読みは「博士の愛した数式」かな。映画も観た。小説も映画もよかったなぁ!それ以来、よく読んでいる。

小川洋子の書く小説は、実に不思議なものばかり。なんか不思議・・・なのに、どうしようもなく惹きつけられる。強烈とか猛烈とかじゃなく、心の奥深いところからじんわりと。でも確実に。

どんなに残酷な内容でも、どんなに何気ない内容でも、一貫して清らかな心地よい静寂が流れているように感じる。雪が降り積もった後のようなしんとして清々しいような美しさがある。

今回の小説も、設定が独特だよなぁと思う。普通の小説の設定なら「拉致から解放された人質8人のインタビュー」とかじゃない?でもこの小説、いきなり全員死んだ後から物語が始まっていくとは。

8人が語る自分の思い出は、自分が体験した少し不思議な、でも何気ない日常の出来事。派手なことや大事件なんてないのに、胸が締め付けられる。全員が、拉致されるという特殊な状況の中、必死で自分の忘れられない記憶を探り誠実に語る。

日本語が分からない犯人グループの見張りも、盗聴している特殊部隊の兵士にも、自分の記憶と真摯に向き合いそれを語る姿や口調に、心を打たれたんだと思う。

どの章もとてもよかった。本当によかった。この小説は、今年読んだ本のベスト10には確実に入る。

でも私が特に好きだったのは「B談話室」「冬眠中のヤマネ」「槍投げの青年」かな。泣けた・・・。じーんと泣けた・・・。

ささやかな日常の積み重ねが素晴らしいものだと、普段は忘れがちな、でもすごく重要なことを思い出させてくれる。観光客ということしか共通点のなかった8人は、心が通じ合い最後は毅然と穏やかだったんだろう、と思う。それはきっと、ささやかな日常を大切に誠実に生きてきたから得られたものだろう。

私もそうありたいと思う。
でもそれって、簡単なようで実に難しいんだよね・・・。


JUGEMテーマ:読書



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